賃貸オフィスを借りている事業主は、解約予告期間について正しく理解をしておくことで、コストの節約につながります。解約予告期間は退去前にならなければ確認する機会がありませんので、契約のときに説明を受けたものの、忘れてしまっているという方も多いのではないでしょうか。この記事では、解約予告期間についての正しい知識を解説します。
解約予告期間って何?
解約予告期間とは、賃貸オフィスを保有しているオーナーのためにある制度です。オーナーは賃貸オフィスを貸し出して、毎月得られる賃料をあてにして生活をしていますので、「明日オフィスを出て行きます」と急に告げられて、賃料が支払われなくなったら困ることになります。
解約予告期間が6カ月に設定されていたなら、その期間でオーナーは次の入居者を募集して、賃料収入が途切れることがないようにすることができます。
事務所の解約予告期間って住宅のとは違うの?
事務所の解約予告期間の目的は、住宅の場合のそれとほぼ同じと考えておいて間違いではありません。どちらも急に入居者から解約を告げられて、次の入居者が決まるまでの間、無収入になってしまうという事態からオーナーを守るためにあります。
しかし賃貸オフィスの契約では、住宅の場合と比べて取引金額が大きいので、特に解約予告期間を長く設定する傾向があります。住宅の場合は1カ月〜2カ月が相場ですが、賃貸オフィスの場合には3カ月〜6カ月が相場になっています。
平成22年3月26日に東京地方裁判所では、「6カ月の予告期間特約が公序良俗に反せず有効である」という判決が下されています。賃貸オフィスの解約予告期間は、6カ月以内ならば違法ではないということが、地方裁判所の判決で示されました。
更新しないという意思表示は意外と難しい
賃貸オフィスの契約を解約したいとき、理論的には意思表示のみで足ります。すなわち、法律上は特にルールはなく、相手に伝わればよいので、口頭で「解約をします」「更新しません」などと伝えれば良いことになります。しかし、口頭だけですませたり、一般郵便で書面を送付したりすると、後から「通知した・していない」というトラブルになる可能性があります。後で絶対にトラブルにならないように意思表示をすることは意外と難しいので、直接相手と会って双方の署名・捺印がある解約合意書を作成したり、内容証明郵便で送付したりといった方法が確実です。
解約予告期間は短縮や延長できるの?
解約予告期間はそのまま違約金の金額にもなっています。例えば、解約予告期間が6カ月に設定されており、3カ月前に退去をする場合なら、残りの3カ月分を違約金として支払わなければなりません。そのため、入居者にとっては、解約予告期間は短いほうが良いことになります。
物件によっては稀に解約予告期間は交渉をして短縮することもできるので、是非交渉をしてみましょう。この制度はオーナーのためにあるものなので、オーナーが合意してくれるかどうかがカギになります。解約予告期間を短縮するとオーナーのリスクが上昇するので、なんらかの条件をつけられる可能性があります。交渉が失敗して、家賃の二重払いが発生してしまったら、次はフリーレントの交渉をしてみることをおすすめします。
忘れずに解約予告期間内に予告を済ませるためには
解約予告通知を出すタイミングとしては、事務所の移転先が決まった後にすみやかに出すというのがひとつのケースです。移転先をじっくりと選定することができるというメリットがあります。この場合、解約予告期間が6カ月であれば、契約日と入居開始日を5カ月ずらすというのがポイントになるでしょう。家賃は入居開始日から発生しますので、うまくすれば家賃の二重払いにならずにすみます。
移転先を決める前に解約予告通知を出すというケースも考えられます。この場合、家賃の二重払いになるリスクは下がりますが、移転先が決まらず最悪物件がないという状況になってしまうというデメリットがあります。
解約予告通知を出した後、気に入った移転先が見つからなかった場合、通知を取り下げるということができるかどうかは、ケースバイケースです。次の入居者が決まっていた場合には難しいですが、まだ次の入居者が決まっていない段階なら、取り消しに応じてもらえる可能性もあります。
解約予告期間を把握してどのタイミングで解約予告通知を出すかということは、大きくコストを節約できるかどうかにつながります。この記事を参考にして、ベストなタイミングを考えてみてください。